「古都の空気を味わおう」京都を舞台にした独特な世界観の小説

京都
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1000年続く古都「京都」。
華やかな観光の街として、国内外からの観光客も年々増加をしています。

この記事では、そんな魅力あふれる古都「京都」を舞台にした独特の世界観を持った小説をご紹介します。
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夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女は森見登美彦さんによる京都を舞台とした小説です。

累計売上130万部を超える大ベストセラー。

2017年、発売から10年以上経って、アニメーション映画として全国公開されて話題になっていましたね。

モテないさえない男子大学生と少々変わり者だが純真な心を持った後輩の女子学生との物語を京都の街を舞台にして描いています。

京都の街で過ごす日々を緩やかに、ファンタジーも交えつつ描いている作品ですが、この夜は短し歩けよ乙女はやたらと名言めいたセリフがたくさん飛び出してきます。

「おともだちパンチ」
親指を他の4本の指で包み込むように握り、招き猫のようにした手で繰り出す愛のあるパンチの事です。

これは主人公の一人である後輩女学生の得意技であります。

身近な人間のほっぺたへ、やむを得ず鉄拳をお見舞いする必要が生じた時、人は拳を強く握りしめる。

その拳をよく見てみると、親指は拳を外側からくるみ込み、いわば他の四本の指を締める金具のごとき役割を果たしている。その親指こそが我らの鉄拳を鉄拳たらしめ、相手のほっぺたと誇りを完膚なきまでに粉砕する。

しかしここで、いったんその拳を解いて、親指をほかの四本の指でくるみ込むように握りなおしてみよう。こうすると、男っぽいごつごつとした拳が、一転して自身なさげな、まるで招き猫の手のような愛らしさを湛える。こんな拳ではちゃんちゃら可笑しくて、満腔の憎しみを拳にこめることができようはずもない。かくして暴力の連鎖は未然に防がれ、世界に調和がもたらされ、我々は今少しだけ美しきものを保ちえる。

「親指をひっそりと内に隠して、堅く握ろうにも握られない。そのそっとひそませる親指こそが愛なのです」

この言い回し…(笑)

京都での若い学生たち(決してウェーイ系ではない)の日常がぎゅぎゅっと詰まった名作です。

そして、この小説を読むと、確実に「偽電気ブラン」が飲みたくなります。

鴨川ホルモー

万城目学さんの京都を舞台とした青春ファンタジー小説です。

2009年に山田孝之、栗山千明など豪華なメンツで映画化されました。

鴨川ホルモー(予告)

Amazonプライム会員の方なら無料で映画視聴する事もできます!
https://www.amazon.co.jp/dp/B00FW60ZJ8

京大青龍会という怪しさ満点なサークルに勧誘された主人公は「ホルモー」という競技を知ります。

まったくやる気がなかった主人公ですが、新歓コンパで出会った女性に一目惚れ。

近づきたい一心でサークルへと入会します。

「ホルモー」とは、オニや式神を使役して戦う競技です。オニは体調20センチほどで4頭身の小さな身体をしており、熊手や棍棒などを武器に戦います。

攻撃部隊、補給部隊がおり、攻撃されすぎて倒れてしまった場合、補給部隊のオニがレーズンを与える事で回復し、また動き出す事ができます。

京都産業大学、龍谷大学、立命館大学、京都大学のそれぞれにホルモーのサークルがあり、4チームにて対戦します。

コミカルなモーションやオニ語(オニに命令する際使用する言語)を駆使して、戦いに挑む主人公たちですが、そう簡単には勝てません。

時に悩み、時に仲間との友情を感じつつ、仲間割れや危機的状況を克服しつつ成長していく姿が非常に微笑ましい作品です。

和風Wizardry純情派/迷宮街輪舞曲

はい。これはもうウィザードリィ好きとしては入れざるを得ませんでした。

元々は和風Wizardry純情派という名前で、はてなダイアリーで書かれていた作品です。

現代の京都にウィザードリィに出てくるような迷宮(迷路でなく洞窟)が出来てしまい、そこから夜な夜な這い出てくる化け物たちを防ぐため、人間たちが地下に潜って倒しにいくという物語。

はてなダイアリーという特性を生かして、物語を俯瞰的に見る小説としてパートと、主人公として据えられいるキャラクターがリアルタイムで日記としてブログ更新しているパートが交互に描かれます。

この物語に出てくるキャラクターたちはみんな普通の人間です。弱い強いの差はあれど、致命的な怪我を負ったら死んでしまうし、死んだら生き返りません。

主人公は自ら進んでこの街(迷宮街)にやってくるのですが、初日に先輩パーティ全滅の知らせを聞いて、「これはヤバい…何か記録しておかないと…」という危機感にかられてはてなダイアリーに日記を残すのです。

まさか自分が自発的に日記をつけることになるなんて夢にも思わなかった。それなのに敢えてしているのは日々を書き留めておかなければならないという強迫観念じみた意識が生まれたから。

和風Wizardry純情派より

ウィザードリィ独自の高難度の設定がめちゃくちゃ効いていて、わりと重要なキャラクターでもあっさりと死んでしまったりします。

日々の探索をこなすキャラクターの人間性や人間関係に焦点を強く当てた群像劇の構成なので、知らず知らずのうちにお気に入りのキャラクターが出来てしまい、そのキャラクターが悲惨な死を迎えようものなら、涙なしには読み進められません。

ここで面白いのは、ただ正義感にかられて倒しにいくだけではないという事。

この、突如出来た迷宮(洞窟)に出てくる化け物たちの身体には、現代科学では生成できない貴重な物質が含まれています。

命がけで洞窟に潜り、化け物を倒してその身体の一部を持ち帰る」という行為がめちゃくちゃ死亡率(18%!)が高いけれども、高収入を狙える仕事になっているわけですね。

小説内では、「現代のガリンペイロ」と表現されています。

設定は現代京都にウィザードリィを持ち込んでいるので、もちろん切った張ったのバトルもあるのですが、やっぱり主人公を始めとする魅力あふれるキャラクターたちの群像劇が楽しいです。

ウィザードリィはテーマではなく、背景の一つなのでウィザードリィを知らない方でも群像劇として十分に楽しめると思います。

後に迷宮街輪舞曲という名前で書籍化されました。

はてなダイアリーはサービスを終了してなくなってしまいましたが、テキストははてなブログに移管して保存されていて、今も読む事ができます。

興味のある方はぜひこちらから読んでみてください。ハマったら2〜3日はこの世界にひきこもっちゃうと思います。

和風Wizardry純情派(Wの跡地)
https://wizdiary.hatenadiary.org/entries/2003/11/01

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